2026年は、民泊(住宅宿泊事業)を取り巻く規制環境が大きく変化した年となった。東京都内の複数区では上乗せ条例が相次いで施行・施行予定となっている。また、民泊規制を回避する手段として旅館業(簡易宿所)を選択する動きが広がった結果、各区は旅館業法の施行条例についても改正に動いている。大阪市では特区民泊の新規受付終了が正式決定し、京都市でも条例改正案の市議会提出が予定されている。

本記事では、東京都(墨田区・葛飾区・渋谷区・豊島区・目黒区・江東区)・大阪府・京都府における2026年の規制動向を、住宅宿泊事業と旅館業の両方の観点から自治体別に解説する。

規制強化の背景

住宅宿泊事業法(民泊新法、平成29年法律第65号)は2018年6月15日に施行された。同法は年間の営業日数を最大180日に制限するとともに、都道府県・市区町村が条例によってさらに厳しい制限を設けることを認めている(同法第18条)。

2023年以降、インバウンド需要の回復を背景に民泊届出件数が各地で再び増加した。ゴミの散乱・深夜の騒音・不特定多数の出入りといった問題が各地で増加し、住民からの苦情が急増した。

加えて、民泊の上乗せ条例を回避する手段として旅館業(簡易宿所)の許可を取得する事業者が増加したため、各区は旅館業法施行条例についても独自規制の整備に動いている。

東京都:各区の規制強化(2026年)

東京都 各区比較表

住宅宿泊事業(民泊)の規制 旅館業の上乗せ規制 施行状況
墨田区 週末のみ(金正午〜日正午)
※管理者常駐なし・新規施設
常駐義務・管理者室設置 2026年4月1日 施行済み
葛飾区 商業地域以外は週末のみ(年約104日)
※管理者常駐なし・新規施設
常駐・巡回義務・居室設置 2026年4月1日 施行済み
渋谷区 制限区域拡大(住居地域追加)
年間約63日・特例要件変更
フロントなし施設に連絡先表示義務
申請前住民説明会義務化
2026年7月1日 施行予定
豊島区 年120日・既存施設にも適用
新設禁止区域を7割に拡大
自治体確認が必要 2026年12月16日 施行予定
目黒区 週末のみ(年間上限104日)
※既存の上乗せ条例
条例改正を2026年秋議会で目指す
(住民説明会・看板表示の義務化等)
旅館業改正:2026年秋 予定
江東区 月正午〜土正午は禁止(週末のみ)
※既存の上乗せ条例
自治体確認が必要 民泊:既存制限

墨田区:2026年4月1日 施行済み 施行済み

「墨田区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例」が2025年12月10日に可決され、2026年4月1日から施行された。民泊と旅館業の双方に対して規制が設けられている。

墨田区 2026年4月1日 施行済み
住宅宿泊事業(民泊)
  • 管理者が常駐しない場合、金曜正午〜日曜正午のみ営業可能(月〜土正午は禁止)
  • 適用対象:施行日以降の新規申請施設のみ(既存施設は適用外)
  • 近隣住民への事前説明範囲を半径20メートル以内に拡大
  • 苦情の内容と対応記録を3年間保存することを義務付け
旅館業
  • 施設内または隣接する場所に管理者室・事務所を設置することが義務化
  • 宿泊者滞在中における営業従事者の常駐が明確に義務化
  • 苦情の記録と3年間の保存義務
「常駐」の定義:届出住宅内・同一建築物内・同一敷地内・隣接する建築物内に管理者がいる状態。

葛飾区:2026年4月1日 施行済み 施行済み

「葛飾区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」が2025年12月17日に公布され、2026年4月1日から施行された。旅館業法施行条例も同時に改正されている。区内の民泊届出件数は令和7年5月時点で620件(令和4年2月比2.2倍)に達し、苦情増加が条例制定の背景にある。

葛飾区 2026年4月1日 施行済み
住宅宿泊事業(民泊)
  • 管理者常駐なしの家主不在型は、商業地域以外では土曜正午〜月曜正午のみ営業可能
  • 実質的な年間営業可能日数:約104日(従来の最大180日から削減)
  • 適用対象:施行日以降の新規申請施設のみ(既存施設は適用外)
  • 業務改善命令に違反した場合、事業者の氏名等を公表
旅館業
  • 宿泊者滞在中における施設内または同一敷地内への従業員常駐を義務化
  • 営業従事者用の居室・専用便所の設置が新たな基準に追加
  • 毎日1回以上の巡回を実施し、「巡回時確認点検表」に記録・保管
既存の旅館業施設(施行時に許可を受けている施設)は当面適用除外。建て替え時には新基準を満たす必要がある。

条例変更の影響について確認したい

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渋谷区:2026年7月1日 施行予定 施行予定

渋谷区は旅館業法施行条例および住宅宿泊事業条例の一部を改正し、2026年7月1日から施行する予定となっている(2026年2月18日に区長から議案提出)。

渋谷区 2026年7月1日 施行予定
住宅宿泊事業(民泊)
  • 制限区域を拡大:従来の住居専用地域等に加え、第1種・第2種住居地域・準住居地域を追加
  • 制限区域での実質的な年間営業可能日数:約63日
  • 特例要件の変更:「半径100m以内の管理業者事務所」要件が削除。外部委託による投資型フル営業モデルが困難に
  • 届出前の事前周知:届出予定日の60日前までに完了義務
旅館業
  • フロント(玄関帳場)を設けていない施設は、公衆の見やすい位置に緊急連絡先等を表示することが義務化
  • 申請前の標識設置・住民説明会の実施・区長への届出・報告が義務化
経過措置:2026年6月30日以前に届出を完了した施設は、施行後も改正前の制限内容が引き続き適用される。

豊島区:2026年12月16日 施行予定 施行予定

豊島区では条例改正案が区議会で全会一致により可決された。2026年12月16日から施行される予定となっている。区内の民泊届出件数は2025年11月時点で1,827件と、東京23区で3番目に多い。

豊島区 2026年12月16日 施行予定
住宅宿泊事業(民泊)
  • 年間営業日数の上限を180日から120日に短縮
  • 営業可能期間:7〜8月(夏休み)、12月15日〜1月14日(冬休み)、3月15日〜4月10日(春休み)
  • 既存施設(届出済み施設)にも遡及適用される
  • 新設禁止区域に住居地域・準工業地域を追加し、区内の約7割が新設禁止区域に
旅館業
  • 旅館業への個別上乗せ規制については、現時点で確認できた情報がない
  • 自治体ごとに運用が異なるため、豊島区保健所への事前確認が必要
注意:既存施設への遡及適用。届出済みの施設も2026年12月16日以降は年120日の制限を受ける。

目黒区:民泊は既存制限/旅館業は条例改正を検討中 旅館業:2026年秋予定

目黒区の住宅宿泊事業については、民泊新法施行時から上乗せ条例による制限が設けられている。旅館業については、日本経済新聞(2026年4月)の報道によれば、2026年秋の区議会での条例改正を目指している。

目黒区 旅館業改正:2026年秋議会 検討中
住宅宿泊事業(民泊)
  • 区内全域で週末のみの営業制限(年間上限104日
  • 具体的な制限時間帯は目黒区への確認が必要
  • 苦情等の問い合わせへの対応内容を記録し、3年間保存する義務がある
旅館業
  • 小規模宿泊施設(一戸建て・集合住宅の一室等)を念頭に旅館業法施行条例の改正を検討
  • 改正案の内容:申請前の住民説明会義務化施設看板への営業種別表示義務化
  • 施行時期は未確定。今後の区議会の審議状況を要確認
出典:日本経済新聞「旅館・ホテル 目黒区、事実上の『民泊』規制へ」(2026年4月)。施行内容・時期は変更される場合がある。

江東区:民泊は既存制限 民泊:既存制限

江東区の住宅宿泊事業については、民泊新法施行時から区内全域を制限区域に指定している。

江東区 民泊:既存の上乗せ条例
住宅宿泊事業(民泊)
  • 区内全域:月曜正午〜土曜正午は禁止(祝日の正午〜翌日正午は除く)
  • 実質的に週末(土正午〜月正午)のみ営業可能
  • 新規届出の際は江東区への事前確認が必要
旅館業
  • 旅館業の上乗せ規制の詳細については、江東区への事前確認が必要
  • 自治体ごとに運用が異なるため、事前相談を推奨
出典:江東区公式ホームページ「住宅宿泊事業(いわゆる民泊)に関する手続き」。

大阪府:特区民泊の新規受付終了(2026年5月29日)

特区民泊とは

大阪市は、国家戦略特別区域の認定を受け、2016年から「特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)」を推進してきた。住宅宿泊事業法(民泊新法)の適用を受けない独自制度で、最低宿泊日数2泊3日以上・面積25㎡以上などの要件を満たすことで認定を受けられる。

新規受付終了の経緯と概要

大阪市は2025年9月に新規受付を終了する方針を示し、2025年11月28日付で内閣総理大臣から認定を受けたことで正式決定した。

項目 内容
受付終了日 2026年5月29日(金)
対象 新規認定申請・居室追加・床面積増加の変更認定申請
背景 ゴミ・騒音等の近隣トラブルの急増
既存施設 従来の条件で営業継続可能。2026年5月29日以前に申請し審査中のものは認定後に既存施設として扱われる

住宅宿泊事業(民泊新法)における大阪市の現行規制

大阪市では住宅宿泊事業についても独自の条例を定めており、住居専用地域において家主不在型の民泊は全期間禁止となっている。詳細な運用については、大阪市への事前確認が必要です。

京都府・京都市:2026年度中の条例改正案提出予定

現行の独自規制

京都市は住宅宿泊事業法第18条に基づく条例により、全国でも厳格な部類に入る独自規制を設けている。

区域・要件 規制内容
住居専用地域等 1月15日〜3月15日の約60日間のみ営業可能
管理者の駐在要件 施設から800メートル以内に駐在し、緊急時に10分以内で到着できること
近隣住民への説明 事業開始の20日前までに書面での説明義務

2026年度中の条例改正案提出へ 提出予定

日本経済新聞(2026年1月)の報道によれば、京都市は民泊の規制強化を検討しており、営業日数・立地条件などをさらに制限する方針を示した。2026年度中に条例改正案を市議会へ提出する予定とされている。条例改正案の具体的な内容・施行時期については、議会提出・可決後に確定する。自治体ごとに運用が異なるため、京都市への事前確認が必要です。

行政体制の強化(実施済み)

  • 2026年2月1日から、住宅宿泊事業法に基づく定期報告義務の違反者への措置を強化
  • 民泊対策専門チームの人員を増強し、朝夜の抜き打ち調査の頻度を引き上げ

旅館業 上乗せ条例の整備状況まとめ

民泊新法の上乗せ条例を回避する手段として旅館業(簡易宿所)を選択する事業者が増加したため、各区は旅館業法施行条例の整備に動いている。以下に2026年時点の状況を整理する。

旅館業の主な上乗せ規制内容 施行状況
墨田区 施設内・隣接場所への管理者室等の設置、宿泊者滞在中の従業員常駐義務化 2026年4月1日 施行済み
葛飾区 宿泊者滞在中の従業員常駐義務化、居室・専用便所の設置、毎日1回以上の巡回と記録保管 2026年4月1日 施行済み
渋谷区 フロントなし施設への緊急連絡先等の表示義務化、申請前の標識設置・住民説明会・区長への届出義務化 2026年7月1日 施行予定
目黒区 申請前住民説明会の義務化、施設看板への営業種別表示義務化(検討中) 2026年秋議会 検討中
豊島区 現時点で確認できた情報なし。事前確認が必要
江東区 自治体への事前確認が必要

旅館業(簡易宿所)を検討している事業者へ:民泊の上乗せ条例を回避する目的での旅館業許可取得については、各区が常駐義務化・申請前手続きの厳格化など独自規制を整備しており、無人・遠隔管理型の運営形態は制約を受ける可能性があります。各保健所への事前相談が必要です。

事業者への影響と対応

既存施設を運営している事業者

  • 豊島区の届出済み施設は2026年12月16日以降、年120日の制限を受ける。既存施設への遡及適用である点に注意が必要。
  • 墨田区・葛飾区・渋谷区の既存施設については、経過措置により新条例の適用外とされているが、詳細は各区への確認が必要。
  • 大阪市の認定済み特区民泊施設は引き続き営業可能だが、今後の運用変更に注意が必要。

新規参入を検討している事業者

  • 豊島区では新設禁止区域が区内約7割に拡大されるため、届出できる物件の選択肢が大幅に絞られる。
  • 渋谷区では制限区域が拡大し、外部委託による投資型モデルの活用が困難になる。届出前の事前周知手続きも60日前までに完了する必要がある。
  • 大阪市の特区民泊は2026年5月29日をもって新規受付が終了した。住宅宿泊事業での参入は可能だが、現行の上乗せ条例の確認が必要。
  • 京都市については条例改正案の内容が確定次第、参入要件が変わる可能性がある。

旅館業(簡易宿所)で参入・運営している事業者

  • 墨田区・葛飾区では常駐義務が既に施行済み。無人・遠隔管理型の運営形態は制約を受ける。
  • 渋谷区では2026年7月1日から申請前の住民説明会等が義務化される予定。既存施設への適用は各区に確認が必要。
  • 目黒区では2026年秋の区議会以降、規制が強化される可能性がある。動向を注視する必要がある。
  • 各区によって保健所の運用が異なるため、事前相談が必要です。

重要:自治体ごとに運用が大きく異なるため、物件所在地の区市町村・保健所への事前確認が必要です。本記事の内容をそのまま自治体判断の根拠にしないでください。

まとめ

2026年は、民泊・旅館業に関する条例整備が東京都内各区で加速した年となった。

  • 墨田区・葛飾区:2026年4月1日施行済み。住宅宿泊事業に加え旅館業への常駐義務化も実施。
  • 渋谷区:2026年7月1日施行予定。制限区域の拡大と特例要件の変更が最大の変更点。旅館業の申請前手続きも義務化。
  • 豊島区:2026年12月16日施行予定。既存施設への遡及適用あり。
  • 目黒区:民泊は既存の週末制限を維持。旅館業の条例改正を2026年秋の区議会で目指している。
  • 江東区:民泊は民泊新法施行時から週末制限。旅館業は要確認。
  • 大阪市:特区民泊の新規受付が2026年5月29日をもって終了。
  • 京都市:2026年度中に条例改正案を市議会へ提出予定。

旅館業(簡易宿所)を民泊規制の回避手段として利用する動きに対し、各区は常駐義務化・申請前手続きの義務化など、旅館業法施行条例の整備を進めている。

注記:本記事は2026年5月時点の情報に基づいて作成しています。条例・運用は変更される場合があります。最新情報は各自治体の公式サイトで必ず確認してください。

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桂国際法務行政書士法人 | 旅館業・民泊専門